人手不足を背景に外国人を雇用する企業が増えるなかで、「不法就労助長罪」という言葉を耳にする機会も増えてきました。
- 不法就労させてしまうと、企業側にどんな罰則があるのか知りたい
- 「知らなかった」で済むのかどうか不安
- 自社の受け入れ体制に問題がないか確認しておきたい
という方のお悩みを解決します!
実は不法就労の罰則は、働いた外国人本人だけでなく、雇っていた企業や担当者にも科されます。しかも「知らなかった」は通用せず、在留カードの確認を怠っていたというだけで処罰の対象になってしまうんです。
さらに2027年4月からは法改正によって罰則が引き上げられ、これまで以上に厳しい対応が求められることになります。
今回は、不法就労で企業が問われる罰則の内容から、厳罰化のポイント、実際の摘発事例、そして今日からできる防止策まで、わかりやすく解説していきます!
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不法就労とは?企業が押さえておきたい3つのパターン
そもそも「不法就労」とは、日本で働く資格を持っていない外国人が働くこと、または認められた範囲を超えて働くことを指します。
「不法滞在の外国人を雇うこと」だけをイメージされる方が多いのですが、実際はもっと幅が広く、有効な在留カードを持っている外国人であっても不法就労になるケースがあるというのが重要なポイントです。

入管庁や警視庁の資料では、不法就労は大きく次の3つに整理されています。
①そもそも在留資格を持っていない人が働く場合
密入国した人、在留期間が切れたまま滞在している人(オーバーステイ)、すでに退去強制が決まっている人などが該当します。日本に滞在すること自体が認められていない状態ですので、働けばそのまま不法就労になります。
なお、入社時点では適法だった外国人が、更新手続きをしないまま在留期限を過ぎてしまい、気づかず就労を続けている——というケースもここに含まれます。企業側が一番見落としやすいのは、実はこのパターンです。
②働くことが認められていない在留資格で働く場合
「短期滞在」で観光目的に来日した人が働く、「留学」「家族滞在」の外国人が資格外活動許可を取らずにアルバイトをする、といったケースです。
本人が「働ける」と思い込んでいることも珍しくないため、企業側が在留カードの裏面まで確認しないと見抜けません。
③認められた範囲を超えて働く場合
就労できる在留資格を持っていても、許可された活動の範囲を超えれば不法就労です。たとえば、調理の技能を評価されて「技能」の在留資格を得た方に工場のライン作業をさせる、資格外活動許可を得た留学生を週28時間を超えて働かせる、といったケースが当てはまります。
3つのうち、まじめに外国人を雇っている企業がうっかり踏んでしまうのは、圧倒的に③です。在留カードは有効なのに違法、という状態が起こり得るため、「カードを見たから大丈夫」では済まないんですね。
このあたりは後ほど詳しく解説していきますので、まずは「不法就労には3つの型がある」ということを押さえておきましょう。
不法就労をさせた企業に科される罰則「不法就労助長罪」
不法就労で罰せられるのは、働いた外国人本人だけではありません。働かせた企業側にも「不法就労助長罪」(入管法第73条の2)という罪が定められています。

読んで字のごとく、不法就労を助長した罪、というわけですね。
罰則の内容は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」
現在の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方(併科)です。
「または」ではなく「両方」が科される可能性がある点に注目してください。罰金を払って終わり、とは限らないということです。
なお、この罰則は2027年4月からさらに引き上げられることが決まっています。詳しくは次の章で解説します。
処罰されるのは直接雇った企業だけではない
入管法が処罰の対象としているのは、次の3つの行為です。
- 事業活動に関して、外国人に不法就労活動をさせる行為
- 不法就労させる目的で、その外国人を自分の支配下に置く行為
- 業として、上記をあっせんする行為
2つ目の「支配下に置く」とは、パスポートや在留カードを預かる、自社が管理する住居に住まわせて外部との交流を制限する、通帳を管理して経済的な自由を奪う、といった行為が該当します。
また、直接の雇用主でなくても責任を問われることがあります。建設工事で下請業者の不法就労に元請業者が深く関与していた場合や、人材を仲介したブローカー・あっせん業者も対象です。契約形態も雇用に限られず、業務委託や請負でも成立し得ます。
「自社が雇っているわけではないから関係ない」とは言い切れないんですね。
法人にも罰金が科される「両罰規定」
入管法には両罰規定があり、違反行為をした担当者個人だけでなく、その法人にも罰金刑が科されます。
つまり、現場の採用担当者が独断で行ったことであっても、会社そのものが処罰の対象になるということです。「一社員のミス」では済まされません。
「知らなかった」では免責されない
ここが最大のポイントです。
入管庁も、雇用しようとする外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していないなどの過失がある場合は処罰を免れないと明示しています。
過失があると判断されやすいのは、次のようなケースです。
- 在留カードの原本を確認しなかった(コピーやスマホ画像で済ませた)
- 在留資格で認められる業務内容を調べなかった
- 不安な点があったのに専門家に確認しなかった
- 怪しい点に気づきながら、あえて確認せずに採用した
逆に「過失がなかった」と認めてもらうハードルはかなり高く、確認を尽くした証拠を残しておくことが求められます。
外国人本人にも重い罰則がある
企業側だけでなく、働いた外国人本人にも罰則があります。
| 内容 | 罰則 |
|---|---|
| 専従資格外活動罪 | 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 |
| 非専従資格外活動罪 | 1年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、または併科 |
| 不法残留(オーバーステイ) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
さらに退去強制(強制送還)の対象となり、その後は一定期間日本に入国できなくなります。初めて退去強制を受けた場合は5年間、過去にも退去強制歴がある場合は10年間、一定の刑事罰を受けて退去強制された場合は原則として永久に上陸が拒否されます。
企業の確認不足が、その方の人生を大きく左右してしまうことにもなりかねません。
【2027年4月~】改正入管法で不法就労助長罪が厳罰化される
2024年6月に公布された改正入管法によって、不法就労助長罪の法定刑が大幅に引き上げられることが決まっています。

技能実習制度を廃止して育成就労制度を創設する、あの法改正に含まれているものです。
罰則は「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」へ
改正前後を比べると、次のように変わります。
| 改正前(現行) | 改正後 | |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
| 併科 | 可 | 可 |
拘禁刑・罰金ともに、およそ1.7倍という引き上げ幅です。両罰規定により法人にも同じ上限の罰金が科されますので、企業にとっての金銭的なダメージも当然大きくなります。
施行日は2027年4月1日
ここは少しややこしいので、丁寧に整理しておきます。
インターネット上には「2025年6月から厳罰化された」と書かれた記事が複数ありますが、これは正確ではありません。2025年6月1日に起きたのは、刑法改正によって「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されたという、刑の名称の変更です。罰則の重さそのものが変わったわけではありません。
一方、5年・500万円への引き上げは、施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)によって2027年(令和9年)4月1日施行と決まりました。育成就労制度の創設や永住許可制度の適正化と同じタイミングです。
つまり、現時点(2026年8月)で適用されているのは、あくまで3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金のほうということになります。
とはいえ、猶予期間があるからといって安心はできません。摘発そのものは今も行われていますし、施行日が来た瞬間に体制を整えるのでは間に合わないからです。
※不法就労助長罪の厳罰化と同時に施行される「育成就労制度」については、以下の記事で詳しく解説しています。
執行猶予がつきにくくなるという実務上の影響
金額や年数以上に見落とされがちなのが、執行猶予への影響です。
刑法の規定上、執行猶予を付けられるのは3年以下の拘禁刑などを言い渡された場合に限られます。現行の不法就労助長罪は法定刑の上限が3年なので、有罪判決を受けても執行猶予がつくケースが少なくありませんでした。
しかし上限が5年に引き上げられると、悪質なケースでは執行猶予がつかず、実刑判決となる可能性が高まります。「逮捕されても執行猶予で済むだろう」という感覚は、2027年4月以降は通用しなくなると考えたほうがよいでしょう。
さらに、拘禁刑以上の刑を受けると建設業許可などの欠格事由にも直結します。このあたりは次の章で詳しく解説していきます。
罰金だけでは終わらない|企業が受ける行政上のペナルティ
不法就労助長罪というと、どうしても「拘禁刑何年」「罰金いくら」という部分に目が行きがちです。
ですが、企業にとって本当に痛いのは、実はその後にやってくる行政上のペナルティのほうだったりします。

「執行猶予がつけば実質的な不利益は少ないだろう」と考えている経営者の方もいらっしゃいますが、これは大きな誤解です。順番に見ていきましょう。
特定技能・技能実習・育成就労が5年間受け入れ停止に
外国人材を受け入れている企業にとって、最も影響が大きいのがこちらです。
罰金刑であっても「出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為」に該当すると判断されれば、受入機関としての基準を満たさなくなります。
その結果、新たに特定技能外国人や技能実習生を受け入れられなくなるだけでなく、その状態が5年間続きます。しかも、すでに雇っている外国人についても転籍を支援しなければならなくなるケースがあります。
技能実習計画の認定が取り消された場合は、企業名が公表される仕組みにもなっています。
なお、この欠格事由は不法就労助長罪に限りません。労働安全衛生法違反など、外国人に対するものでなかった違反であっても同じ結果になり得ます。「罰金で済ませましょう」という誘いに軽い気持ちで応じると、想定外に重いペナルティを受けることになりかねません。
※特定技能で受け入れられる分野や業務内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
建設業許可・派遣業・職業紹介の許可が取り消される
許認可を必要とする事業では、さらに深刻です。
建設業法では、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終えてから5年を経過しない者が欠格事由とされています。執行猶予がついた場合も「刑に処せられた」ことに変わりはありません。法人の場合も、役員や政令で定める使用人が該当すれば、会社として欠格事由に当たります。
人材事業ではもっと直接的です。労働者派遣法や職業安定法には、不法就労助長罪で罰金刑を受けた場合を名指しで欠格事由とする規定があり、実際に派遣事業と有料職業紹介事業の許可を同時に取り消された事例も公表されています。
派遣業や職業紹介業そのものに違反がなくても、入管法違反ひとつで免許を失うということですね。監理支援機関・登録支援機関・派遣・職業紹介をグループで運営している企業であれば、一つの違反が全事業に波及します。
※監理支援機関の許可要件や欠格事由については、以下の記事をご覧ください。
社会的信用の失墜と経営への打撃
刑事罰でも行政処分でもありませんが、実務上いちばん早く効いてくるのがこちらです。
報道されれば取引先からの契約解除や、公共事業の入札からの排除につながります。人材派遣業の場合、派遣先が「犯罪収益にあたる」として派遣料金の支払いを拒むケースもあり、資金繰りが一気に悪化して倒産に至った例もあると指摘されています。
加えて、時間をかけて育てた人材を失い、採用活動を一からやり直すコストもかかります。
罰金500万円より、事業そのものが止まることのほうがはるかに重い——これが不法就労助長罪の本当の怖さです。
実際に摘発された不法就労助長罪の事例
「うちは悪意なんてないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、実際に摘発されているのは、決して反社会的な組織ばかりではありません。

ごく一般的な企業が、確認不足や制度の誤解によって書類送検されているのが実態です。警察庁や報道で公表されている事例から、典型的な3つのパターンを見ていきましょう。
事例①:在留期限の切れた従業員を働かせ続けたケース
採用時には有効な在留カードを持っていた外国人従業員が、その後更新をしないまま在留期限を過ぎ、それに気づかず数か月にわたって就労を続けていたというケースです。
経営者は「本人が更新したと言っていたので信じていた」と説明したものの、在留カードの現物を確認していなかったことが過失にあたるとされ、法人と代表者の双方が書類送検されました。
在留期限の管理は本人任せにできない、というのがこの事例の教訓です。
事例②:留学生を週28時間を超えて働かせたケース
飲食チェーンで、資格外活動許可を得ている留学生アルバイトを繁忙期に長時間シフトへ入れ、週28時間の上限を大きく超えて働かせていたというケースです。なかには週39時間以上勤務していた学生もいました。
このケースでは、店長だけでなく運営会社の社長、そして法人も入管法違反の疑いで書類送検されています。さらに、ハローワークへの雇用状況の届出を怠っていた点についても立件されました。
留学生の労働時間は、他社でのアルバイトと合算して28時間以内である必要があります。自社分だけを見て安心していると足元をすくわれます。
※週28時間の数え方や長期休暇中の扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
事例③:専門職の在留資格で単純作業をさせていたケース
「技術・人文知識・国際業務」など専門的な業務を前提とする在留資格で受け入れた外国人に、実際は工場のライン作業や盛り付けといった単純作業をさせていたケースです。
採用担当者は「違法と分かっていたが人手不足を解消したかった」と話しており、会社とともに書類送検されました。派遣を経由していたものの、労働時間や業務内容を実質的に決めていたのは受け入れ側の企業だったと認定されています。
在留資格は肩書きではなく実際の業務内容で判断されるということ、そして派遣だから責任を免れるわけではないということを示す事例です。
不法就労はどこから発覚するのか
「バレなければいい」という発想が、実は一番リスクの高い対応です。不法就労は、企業が思っている以上にさまざまな経路から明るみに出ます。
入管による受入機関への実態調査、ハローワークへの届出内容との突合、在留期間の更新申請時に提出された源泉徴収票から週28時間ではあり得ない収入が判明するケース、元従業員や取引先からの通報、労災事故や別件の刑事事件をきっかけとした発覚など、経路は一つではありません。
とくに近年は、外国人の受け入れ制度全体で審査や実態調査の強化が進められています。「今までバレなかったから」は、これから先の安全を何ら保証してくれないんですね。
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意図せず不法就労になりやすいケース
摘発事例を見ると、悪意を持って外国人を働かせていたケースばかりではないことがわかります。

むしろ多いのは、「人手が足りないから少しだけ手伝ってもらった」「本人が大丈夫だと言っていた」といった、現場のちょっとした判断が積み重なった結果です。ここでは、企業がうっかり踏みやすいポイントを整理していきます。
在留資格と業務内容のズレが最大の落とし穴
もっとも危険なのが、在留カード自体は有効なのに、任せている仕事が在留資格の範囲から外れているというパターンです。
とくに「技術・人文知識・国際業務」は、専門知識を活かすホワイトカラー向けの在留資格であり、単純労働は認められていません。採用時の肩書きが「通訳」や「マーケティング担当」であっても、実態が工場のライン作業や店舗の清掃・配膳であれば不法就労にあたります。
在留資格は職種名ではなく、実際に何をさせているかで判断される、という点を押さえておきましょう。
※制度ごとに任せられる業務は異なります。違いを整理したい方は以下の記事をご覧ください。
【業種別】認められる業務・認められない業務の例
イメージしやすいよう、「技術・人文知識・国際業務」を例に整理してみました。
| 業種 | 認められる業務 | 認められない業務 |
|---|---|---|
| ホテル・旅館 | 外国語を活かしたフロント業務、海外向けの集客企画 | 客室清掃、ベッドメイク、荷物運搬が主となる業務 |
| 製造業 | 生産管理、品質管理、技術設計、海外取引先との折衝 | 組立ラインでの作業、梱包、部品の仕分け |
| 飲食業 | メニュー開発、店舗の経営管理、海外展開の企画 | 皿洗い、調理補助、ホールでの配膳 |
ポイントは「主として何をしているか」です。専門業務に付随する範囲であれば問題ないこともありますが、単純作業が中心になっていれば違反と判断されます。
現場判断での配置転換・業務変更に注意
採用時点では適法だったのに、途中から違法になってしまうというパターンも見落とされがちです。
繁忙期に別部署へ応援に出す、欠員が出たので担当を変える、特定技能の外国人に他分野の業務を兼任させる——こうした現場レベルの判断が、そのまま不法就労につながることがあります。
配置転換や業務内容の変更を行うときは、その都度在留資格との適合性を確認する運用にしておきたいところです。
留学生の労働時間は「他社分も合算」
留学生を雇う場合、資格外活動許可を得ていても労働時間は原則として週28時間以内(大学等の長期休暇中は週40時間まで)です。
ここで注意したいのが、この28時間は掛け持ち先を含めた合計だという点。自社では20時間しか入れていなくても、他店で15時間働いていれば超過してしまいます。
「知らなかった」「時間管理ができていなかった」という理由で免責されることはありませんので、採用時に他のアルバイト先の有無まで確認しておきましょう。
派遣・業務委託でも受け入れ企業の責任は残る
「派遣会社が確認しているはずだから大丈夫」という思い込みも危険です。
労働時間や業務内容を実質的に決めているのが受け入れ側であれば、派遣先企業も不法就労助長罪の対象になり得ます。実際に、派遣元と派遣先の双方が責任を問われた事例もあります。
業務委託や請負であっても同様で、契約の形式ではなく実態で判断されると考えておくのが安全です。
不法就労助長罪に問われないために企業がやるべきこと
ここまで読んで「うちは大丈夫かな…」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、やるべきことははっきりしています。「過失がなかった」と言える状態をつくっておくこと、これに尽きます。今日から始められる対策を順番に見ていきましょう。

①在留カードは必ず原本で確認する
もっとも基本的で、もっとも重要な対策です。
コピーやスマホの画像では偽造を見抜けませんので、必ず現物を提示してもらってください。確認すべきポイントは次のとおりです。
- 顔写真と本人が一致しているか
- 在留期限が切れていないか(更新手続き中かどうかも含めて)
- 表面の「就労制限の有無」欄の記載内容
- 「就労不可」の場合は、裏面の「資格外活動許可」欄に許可の記載があるか
なお、在留期間が「3月」以下の方や特別永住者など、在留カードを持たないケースもあります。その場合はパスポートで就労の可否を確認しましょう。
仮放免許可書を持っている方は原則として就労できませんので、こちらも要注意です。
※在留カードだけでは就労の可否が判断できない「特定活動」については、以下の記事をご覧ください。
②読取アプリと失効情報照会で偽造カードを見抜く
近年の偽造在留カードは非常に精巧で、目視だけで見抜くのは正直かなり難しいのが実情です。
そこで活用したいのが、出入国在留管理庁が無料で提供している在留カード等読取アプリケーション。カードに内蔵されたICチップの情報を読み取り、券面の情報が偽造・改ざんされていないかを確認できます。
あわせて、在留カード等番号失効情報照会でカード番号が失効していないかもチェックしましょう。2025年11月からは読取アプリ内で失効情報の照会もできるようになっています。
実務上、この読取アプリを使っていたかどうかが「過失なし」を主張できるかの分かれ目になると言われています。ぜひ導入しておきたいですね。
ただし、実在する番号を悪用した偽造カードもあるため、番号の有効性だけで安心せず、複数の方法を組み合わせることが大切です。
③転職者の採用時は「就労資格証明書」を活用する
転職者を受け入れる場合や、社内で大きく配置転換を行う場合に強い味方になるのが「就労資格証明書」です。
これは、新しい勤務先・業務内容がその在留資格の範囲内であることを入管が公式に証明してくれる書類。いわば入管のお墨付きをもらえるわけですね。
取得しておけば適法性を客観的に示せますし、次回の在留期間更新で「資格に合わない」として不許可になるリスクも大きく減らせます。判断に迷いやすい場面ほど、活用する価値があります。
④在留期限をアラートで管理する
事例でも見たとおり、在留期限切れは本人任せにすると必ず抜け漏れが出ます。
更新申請は在留期限の3か月前から可能ですので、社内の管理表や人事システムにアラートを設定し、期限の3か月前には必ず気づける仕組みにしておきましょう。確認した在留カードのコピーを保管しておくことも、記録として有効です。
⑤外国人雇用状況の届出を確実に行う
外国人を雇い入れたとき・離職したときは、ハローワークへの届出が義務づけられています(労働施策総合推進法第28条)。
届出を怠ったり虚偽の届出をしたりすると、外国人1人につき30万円以下の罰金の対象です。人数が多ければ金額も膨らみますし、「不法就労を隠そうとした」と受け取られる原因にもなります。
雇用保険の被保険者かどうかで様式や期限が異なりますので、そこも押さえておきましょう。
⑥現場の管理者にも周知・研修を行う
不法就労の多くは、本社ではなく現場の判断から生まれます。
店長や現場リーダーが「今日だけ手伝って」「人が足りないからシフト増やして」と善意で判断した結果、会社全体が処罰されることになりかねません。
在留資格と就労制限の基本、労働時間の管理方法、業務内容を変えるときの相談フロー——このあたりは、外国人と接するすべての管理者に共有しておきたい内容です。年1回程度の研修を実施している企業もあります。
判断に迷ったときは、自己判断で進めず、就労を始める前に入管や外国人雇用に詳しい専門家へ相談してくださいね。
不法就労が発覚してしまったときの対応手順
「もしかしたら、うちも該当しているかもしれない…」
そう気づいたとき、どう動くかで結果は大きく変わります。もっとも危険なのは、発覚を恐れて何もせず、そのまま就労を続けさせてしまうことです。時間が経つほど違反の期間は伸び、悪質性が高いと判断されてしまいます。

慌てず、次の順番で対応していきましょう。
①ただちに就労を停止させる
まずは該当する外国人の就労を止め、自宅待機を命じます。
「代わりの人がいないから来週まで」といった判断は絶対に避けてください。違反状態を認識しながら働かせ続けたとなれば、故意があったと見なされかねません。
留学生の労働時間超過など軽度に見えるケースでも、シフトを即座に見直して適法な範囲に戻すことが必要です。
②事実関係を確認・記録する
本人に在留カードやパスポート、資格外活動許可の内容を改めて提出してもらい、いつからどのような状態だったのかを整理します。
このとき、確認した内容・日付・対応した担当者を記録に残しておくことが大切です。後に「気づいてすぐ是正した」という事実を示す材料になります。
③専門家に相談する
事実関係が見えてきたら、外国人雇用に詳しい弁護士や行政書士に相談しましょう。
自己判断で入管に連絡したり、本人に退職を促したりすると、かえって不利な状況を招くことがあります。刑事責任だけでなく、許認可や受け入れ資格への影響も含めて、全体を見渡した対応方針を立てる必要があるからです。
④入管に相談し、改善計画を示す
隠し通そうとするのが、事業継続にとって最大のリスクです。
受入機関としての欠格事由に該当するかどうかは、事案の重さに応じて個別に判断されるとされています。不正の事実をありのまま申告し、経緯と再発防止策を具体的に示すことで、欠格事由に当たらないと判断される余地があるわけですね。
実務でも、刑事事件になる前の段階で専門家を交えて行政庁と協議したことで、許可の取消しまで至らなかった事例が少なくないと指摘されています。
逆に、過去の違反を隠したまま新たな在留資格の申請を行うと、在留資格等不正取得罪という別の犯罪に問われる可能性があります。行政機関どうしは情報を共有していますので、虚偽の申請は絶対に避けてください。
⑤雇用を続けるなら適法な状態に戻す
その外国人を引き続き雇用したい場合は、在留資格の変更や更新の手続きが必要かどうかを確認します。手続きには時間がかかることもありますので、早めに動き出しましょう。
本人が自主的に出頭することでペナルティが軽減される場合もあります。企業としては、本人の状況整理をサポートしつつ、法令に沿ったプロセスで進めていくことが求められます。
⑥再発防止の体制を整える
最後に、なぜ気づけなかったのかを振り返り、社内の仕組みを見直します。
在留期限の管理方法、業務内容を変更するときの確認フロー、現場管理者への周知——前章のチェックポイントを社内ルールとして明文化しておくと、次に同じことは起こりません。
【FAQ】不法就労の罰則に関するよくある質問
最後に、企業のご担当者からよく寄せられる疑問をまとめました。
Q1. 不法就労助長罪の厳罰化はいつからですか?
2027年4月1日からです。育成就労制度の創設と同じタイミングで施行されます。
「2025年6月から厳罰化された」という情報を見かけることがありますが、これは正確ではありません。2025年6月に施行されたのは、懲役・禁錮を「拘禁刑」に一本化する刑法改正であり、罰則の重さ自体は変わっていません。
現時点で適用されるのは、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)です。
Q2. 在留カードを確認していれば、罰せられませんか?
必ずしもそうとは限りません。
在留カードの目視確認だけでは、精巧な偽造カードを見抜けない場合があります。読取アプリでICチップを確認する、失効情報を照会するといった、公的に推奨されている手段を取っていたかどうかが問われます。
また、カードが本物であっても、任せている業務が在留資格の範囲外であれば不法就労です。「カードを見たから大丈夫」とは考えないほうが安全ですね。
Q3. アルバイトや短期の雇用でも対象になりますか?
なります。雇用形態や期間は関係ありません。
数日間の短期アルバイトであっても、在留カードの確認とハローワークへの雇用状況の届出は必要です。むしろ短期・繁忙期の採用ほど確認が甘くなりがちなので、注意が必要な場面といえます。
Q4. 派遣社員や請負先の外国人でも責任を問われますか?
問われる可能性があります。
労働時間や業務内容を実質的に決めているのが受け入れ側であれば、派遣先企業も不法就労助長罪の対象になり得ます。実際に派遣元・派遣先の双方が責任を問われた事例もあります。
「派遣会社が確認済みのはず」という思い込みは禁物です。契約の形式ではなく、実態で判断されると考えておきましょう。
Q5. 外国人雇用状況の届出を出し忘れたらどうなりますか?
外国人1人につき30万円以下の罰金の対象となります(労働施策総合推進法第40条第1項第2号)。虚偽の届出をした場合も同様です。
出し忘れに気づいたら、すぐに事業所を管轄するハローワークに連絡して指示を仰いでください。放置していると、不法就労を隠そうとしたと受け取られる原因にもなります。
Q6. 従業員の在留期限が切れていたら、すぐ解雇すべきですか?
まずは就労を停止させることが先決ですが、いきなり解雇を決める必要はありません。
在留資格の更新や変更の手続きによって、適法に働ける状態に戻せるケースもあります。判断を誤ると企業側の責任が重くなることもありますので、外国人雇用に詳しい専門家に相談したうえで方針を決めてくださいね。
Q7. 過去に罰金刑を受けた場合、外国人の受け入れはできなくなりますか?
原則として、5年間は特定技能・技能実習・育成就労での受け入れができなくなります。
ただし、欠格事由に該当するかどうかは事案の重さに応じて個別に判断されるとされています。事実を隠さず申告し、経緯と再発防止策を丁寧に説明することで、判断が変わる余地もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
不法就労で企業に科される罰則について、内容から厳罰化のポイント、実際の事例、防止策まで詳しく解説してきました。
今回の重要なポイントをまとめると、以下のようになります。
- 不法就労には「在留資格がない」「就労が認められない資格」「認められた範囲を超える」の3パターンがある
- 不法就労させた企業は不法就労助長罪に問われ、現在は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)
- 両罰規定により、担当者個人だけでなく法人にも罰金が科される
- 「知らなかった」は通用せず、在留カードの確認を怠っていれば過失が認定される
- 2027年4月1日から5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に引き上げられる(2025年6月からではない点に注意)
- 罰則以上に痛いのは、外国人材の5年間受け入れ停止や許認可の取消といった行政上のペナルティ
- 在留カードの原本確認+読取アプリ+失効情報照会の3点セットが基本の防衛策
- 万が一発覚したら、隠さずただちに就労を停止し、専門家と入管に相談することが最善
とくに気をつけたいのが、有効な在留カードを持っている外国人であっても不法就労になり得るという点です。摘発事例の多くは、悪意のない「人手が足りないから」という現場判断から生まれています。
厳罰化まではまだ時間がありますので、今のうちに確認フローを整えておきましょう。適正な雇用は、企業を守るだけでなく、外国人材が安心して働ける環境づくりにもつながります。
判断に迷ったときは自己判断で進めず、ぜひ専門家にご相談くださいね!

