技能実習生が失踪したときの対応は?届出先・期限・退職手続きを時系列で解説

朝、技能実習生が出社してこない。寮を見に行ったら荷物がなくて、電話もつながらない——。

実際にこういう状況に直面すると、頭が真っ白になってしまいますよね。

  • 「まず誰に連絡すればいいの?」
  • 「届出はいつまでに出さないといけないの?」
  • 「うちの会社、罰を受けたりするのかな…」

失踪への対応は、届出先が複数の機関にまたがっていて、しかもそれぞれ期限がバラバラなんです。ひとつでも抜けると、あとから別のトラブルに発展してしまうこともあります。

そこで今回は、技能実習生が失踪したときにやるべき対応を時系列で・届出先と提出期限を一覧表で・意外と見落としがちな退職手続きの落とし穴・受入れ企業へのペナルティはあるのかを、わかりやすく整理してご紹介していきます!

さらに、2026年7月に公表されたばかりの最新データや、2027年4月からスタートする育成就労制度との関係についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

※制度の全体像は「育成就労制度とは?技能実習との違い・対象17分野・企業の準備を2026年最新版で解説」で詳しくまとめています。

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そもそも「失踪」とは?連絡が取れないだけでは判断できない

「今日は無断欠勤かな」と思っていたら、翌日も来ない。電話をかけてもつながらない——。

こういうとき、つい「失踪だ」と決めつけてしまいがちですが、実はここで判断を急ぐのは危険なんです。

失踪とは、本人の意思で所在をくらませ、連絡が取れなくなった状態のことを指します。つまり「本人が自分の意思で姿を消した」ことが前提。事件や事故に巻き込まれて連絡が取れないケースは、本来「失踪」にはあたりません。

ここを取り違えたまま手続きを進めてしまうと、本当に必要だった対応が遅れてしまうことがあります。

失踪と判断できるケース・判断を急いではいけないケース

まずは落ち着いて、状況を切り分けていきましょう。

失踪の可能性が高いのは、こちらから何度連絡しても意図的に応答がない場合です。スマートフォンが着信拒否になっている、SNSをブロックされている、携帯電話そのものを置いていっている——といった状態であれば、本人の意思で連絡を絶っていると考えられますよね。

一方で、こんなときは慎重に判断してください。

  • 寮の部屋に私物や貴重品がそのまま残っている
  • 在留カードやパスポートが置いたままになっている
  • 前日まで普段どおりで、何の予兆もなかった

計画的に姿を消したのであれば、身分証や大切なものを置いていく理由がありません。「もぬけの殻」ではなく「生活感がそのまま残っている」場合ほど、事件性を疑うべきということですね。

まずは寮と持ち物を確認する

そのため、最初にやっていただきたいのが寮の確認です。

管理者の立ち会いのもとで部屋に入り、荷物や貴重品、在留カード、パスポートが残っているかをチェックしましょう。あわせて、同じ職場の同僚や近くに住んでいる他の実習生にも声をかけてみてください。

「最後に会ったのはいつか」「最近変わった様子はなかったか」「誰かと連絡を取っていた形跡はないか」

こうした聞き取りは、このあと提出する届出書を書くときにも必要になる情報です。記憶が新しいうちに、日時とあわせてメモを残しておくことをおすすめします!

事件・事故の可能性を先に検討する

そして、ここがいちばん大事なポイント。

私物や身分証が残っているなど事件性が否定できない場合は、「失踪」と決めつけずに先へ進まないでください。

急病で倒れている、事故に遭って搬送されている、あるいは何らかのトラブルに巻き込まれている——という可能性が残っているうちは、警察や病院への照会を優先すべき段階です。

「まだ失踪と決まったわけではないから」と様子を見てしまうのが、実はいちばん危ないパターン。判断がつかないときこそ、監理団体に状況を共有して、一緒に判断してもらいましょう。

【最新データ】技能実習生の失踪者数は大きく減少している

「失踪って年々増えているんでしょう?」というイメージをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

実は最近、状況が大きく変わっているんです。

令和7年の失踪者数は3,950人(前年比39.3%減)

出入国在留管理庁が令和8年7月に公表した資料によると、令和7年の技能実習生の失踪者数は3,950人でした。前年から2,560人減り、率にすると39.3%の減少です。

推移を並べてみると、変化がよくわかります。

失踪者数技能実習生数に占める割合
令和3年7,167人1.8%
令和4年9,006人1.9%
令和5年9,753人1.9%
令和6年6,510人1.2%
令和7年3,950人0.6%

令和5年のピーク時と比べると、2年でおよそ6割減。割合で見ても1.9%から0.6%まで下がっていて、「失踪は増え続けている」という前提は、もう現状と合わなくなってきています。

なお、この数字は速報値として公表されているものです。

国籍別|ベトナムが約6割、ミャンマーは急減

令和7年を国籍別に見ると、ベトナムが2,593人で全体の65.6%を占めています。次いでインドネシア444人、ミャンマー398人、カンボジア195人、中国137人という順です。

注目したいのがミャンマー。前年の1,263人から398人へと、68.5%も減っています。これは令和6年10月に緊急避難措置の運用が見直されたことが大きく影響していて、実際に見直し後の月から失踪者数が一気に落ち込んでいます。

ちなみに、上位5か国はすべて前年より減少しました。

職種別・都道府県別に見た傾向

職種別では、建設関係が2,167人で全体の54.9%と突出しています。在留者数に占める割合で見ても建設関係の高さが目立つため、この分野では月給制の導入や建設キャリアアップシステムの登録義務化といった上乗せ基準が設けられています。

都道府県別では、東京都328人、愛知県318人、埼玉県275人の順に多い結果でした。ただし在留者数に対する割合で見ると東京都1.9%、山形県1.5%、青森県1.2%となり、人数の多さと割合の高さは必ずしも一致しません。

なお、令和3年から令和7年までの失踪者36,386人のうち、81.8%にあたる29,777人は、その後の出入国在留管理上の手続きで所在が確認されています。

「失踪=そのまま行方不明」というわけではない、という点も押さえておきたいですね。

技能実習生が失踪してしまう主な理由

そもそも、なぜ実習生は失踪という選択をしてしまうのでしょうか?

在留資格を失って不法滞在になるリスクを負ってまで姿を消すには、それなりの事情があります。原因を知っておくことは、再発防止にも、届出書を書くときの状況整理にも役立ちますよ。

受入れ企業側に原因があるケース

入管庁は失踪の要因のひとつとして、暴行などの受入れ機関側の不適正な行為を挙げています。

現場で手を上げる、大声で怒鳴りつけるといった行為はもちろんですが、国籍や宗教、性別を理由にした差別的な扱いも同じです。日本人従業員なら「転職する」という逃げ道がありますが、実習生にはそれがありません。行き場をなくした結果として、失踪につながってしまうケースがあります。

そして、もうひとつ多いのがお金の問題です。

  • 残業代が支払われない、不当に減額されている
  • 提示していた条件と実際の賃金が違う
  • 家賃や光熱費の控除が過大で、手取りが極端に少ない

最低賃金は守っていても、税金・社会保険料・家賃などを引いた手取りが想像以上に少なくなることがあります。SNSで他社の実習生と給与を比べて不満が募る、というのもよく聞く話ですね。

技能実習生側の事情によるケース

企業側に落ち度がなくても、失踪が起きることはあります。背景にあるのは、多くの場合「借金」です。

入管庁の実態調査では、来日前に借入れをした技能実習生は全体の約55%、その平均額は約55万円とされています。母国の平均月収を考えると、決して軽い金額ではありません。

しかも、額面と手取りの違いを理解しないまま返済計画を立てているケースも少なくないんです。「思っていたより返せない」と気づいたときに、より高い収入を求めて姿を消してしまう——という流れですね。

そこにブローカーの誘いが重なると、一気に失踪へと傾いてしまいます。実習生が孤立していると、こうした外部の声のほうが身近に感じられてしまうことも。

そのほか、実習期間が終わっても日本で働き続けたい、という動機で失踪する方もいます。

「転籍できない」という制度上の事情

見落とされがちですが、制度そのものが失踪を後押ししてしまっている側面もあります。

技能実習は技能移転を目的とした制度なので、実習先の変更は原則として認められていません。つまり、職場に問題があっても実習生には「別の会社に移る」という正規の選択肢がないんです。

相談しても状況が変わらない、でも移ることもできない。そうなったとき、残された手段が失踪しかなくなってしまう——この構造こそが、制度見直しの大きな理由のひとつになりました。

逆にいえば、日頃から相談できる環境があるかどうかで、結果はかなり変わってくるということですね。

※技能実習と特定技能では転職の可否が大きく異なります。詳しくは「技能実習生と特定技能の違いを比較|制度・期間・転職可否をわかりやすく解説」をご覧ください。

技能実習生が失踪したときの対応7ステップ

ここからは、実際にやるべきことを順番に見ていきましょう。

届出先が複数の機関にまたがるので、「誰が」「どこに」「いつまでに」を意識しながら進めるのがポイントです。

ステップ1|本人・同僚・寮の状況を確認する

まずは事実確認から。電話やメッセージアプリで本人に連絡を取りつつ、寮の部屋、同僚への聞き取りを行います。

このとき確認した内容は、あとで提出する届出書に書く材料になります。「いつから連絡が取れないか」「最後に確認できたのはいつか」を、日付レベルで記録しておきましょう。

ステップ2|監理団体へ即日連絡する

団体監理型で受け入れている場合、実習の継続が難しくなったときは、速やかに監理団体へ通知しなければならないと定められています。

ここが遅れると、このあとの機構への届出もまるごと後ろ倒しになってしまいます。判断に迷う段階でも構わないので、まずは連絡を。失踪当時の状況や最近の様子を聞かれますので、包み隠さず正直に伝えてくださいね。

ステップ3|警察へ行方不明者届を出す

事件や事故の可能性を考え、最寄りの警察署に行方不明者届を提出します。

企業から出すのか監理団体から出すのかは、あらかじめ相談して決めておきましょう。二重に出す必要はありませんが、「相手が出しているだろう」と思い込んで誰も出していなかった、というのが一番避けたいパターンです。

ステップ4|送出機関・母国の家族へ確認してもらう

監理団体を通じて送出機関に連絡し、母国の家族や緊急連絡先に本人からの接触がないかを確認してもらいます。

家族には連絡している、というケースは実際にあります。所在がつかめれば、状況が大きく変わることも。

※送出機関の役割については「送り出し機関とは?役割や費用、監理団体との違いをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

ステップ5|外国人技能実習機構へ技能実習実施困難時届出書を提出する

実習の継続が困難になった場合、外国人技能実習機構(OTIT)への届出が必要です。

  • 団体監理型:実習実施者から通知を受けた監理団体が、様式第18号を提出
  • 企業単独型:実習実施者自身が、様式第9号を提出

提出先は、実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所・支所の認定課です。

期限は「遅滞なく」とされていて、日数の指定はありません。ただ実務上は2週間以内を目安に動くのが安全です。合理的な理由なく遅れると、それ自体が問題になりかねませんので。

なお、失踪先がわかっている場合でも届出は必要です。提出後は届出書の内容と監理団体の監査記録が照らし合わされ、記載された理由が正当かどうかを機構が判断します。

ステップ6|失踪前日までの給与を計算して支払う

連絡が取れなくても、働いた分の賃金は支払う義務があります。

失踪前日までの労働分を計算し、通常の給料日に本人口座へ振り込みましょう。ここを止めてしまうと賃金未払いとみなされ、企業側の落ち度として扱われてしまいます。

もちろん、失踪後の働いていない期間について支払う必要はありません。

ステップ7|ハローワーク・年金事務所での資格喪失手続き

退職の扱いが確定したら、行政手続きに進みます。

ハローワークへは外国人雇用状況の届出(離職)を、雇用保険の被保険者であれば資格喪失届もあわせて提出します。健康保険・厚生年金についても年金事務所への手続きが必要です。

ここで注意していただきたいのが、「そもそも退職扱いにできるのか」という問題。就業規則の定め方によっては、この段階で手が止まってしまうことがあります。詳しくは次の章でお話ししますね。

※記入方法は「【記入例つき】外国人雇用状況届出書の書き方を欄ごとに解説!提出期限・提出方法も」をご覧ください。

失踪時の届出先と提出期限まとめ【一覧表】

失踪対応でいちばん混乱しやすいのが、届出先が複数の機関に分かれていて、しかも期限がバラバラという点です。

ここで一度、整理しておきましょう。

届出先手続きの名称提出する人期限
警察署行方不明者届企業または監理団体できるだけ早く
外国人技能実習機構技能実習実施困難時届出書
(様式第18号/様式第9号)
監理団体
※企業単独型は企業
遅滞なく
(目安2週間以内)
ハローワーク外国人雇用状況の届出(離職)企業離職日の翌月末日まで
ハローワーク雇用保険被保険者資格喪失届企業離職日の翌日から10日以内
年金事務所健康保険・厚生年金保険
被保険者資格喪失届
企業5日以内
市区町村給与所得者異動届出書(住民税)企業異動があった月の翌月10日まで

こうして並べてみると、同じハローワークへの届出でも期限が違うことがわかりますよね。

雇用保険の資格喪失届は「翌日から10日以内」とかなり短く、外国人雇用状況の届出は「翌月末日まで」。うっかり後者の感覚で構えていると、雇用保険のほうが間に合わなくなります。

なお、外国人雇用状況の届出は労働施策総合推進法にもとづく義務で、怠ったり虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります。忘れていたことに気づいた場合は、放置せずに管轄のハローワークへすぐ連絡してくださいね。

ちなみに「遅滞なく」と「翌月末日まで」は、性質がまったく違います。前者は日数の指定がないぶん自由に見えますが、裏を返せば合理的な理由なく遅れれば、それ自体が問われるということ。むしろ気を抜けない表現だと考えておきましょう。

※住民税の異動届については自治体によって運用が異なる場合がありますので、念のため管轄の市区町村にご確認ください。

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意外と見落とされる「退職手続き」の3つの落とし穴

失踪の対応というと、届出のことばかりに目が向きがちですよね。

でも実務でつまずくポイントは、むしろこのあとにあります。ここを知らないまま進めてしまうと、あとから大きなトラブルになりかねません。

落とし穴1|失踪を理由に会社都合で解雇するのは危険

「来ないなら解雇でいいのでは」と考えてしまいそうですが、これがいちばん危ないパターンです。

技能実習生を受入れ機関の都合で解雇すると、技能実習計画の認定における欠格事由に当たるおそれがあります。もし認定取消しとなれば、5年間は技能実習生を受け入れられなくなり、現在受け入れている実習生の実習も継続できなくなります。

失踪した1人への対応が、会社全体の受入れ体制を揺るがしてしまう——そう考えると、慎重にならざるを得ませんよね。

落とし穴2|就業規則に規定がないと退職扱いにできない

では解雇せずにどうするかというと、就業規則の「当然退職」の規定を使うのが基本です。

たとえば「本人と連絡が取れず勤務の意思が確認できない状態が30日を経過したとき、当然退職とする」といった条文ですね。これがあれば、解雇という形を取らずに退職の手続きへ進めます。

問題は、この規定がない場合。原則としては本人の合意による退職を目指すことになりますが、連絡が取れない相手と合意を交わすのは、現実的にかなり難しいですよね。

つまり、規定の有無で対応の難易度がまるで変わってしまうんです。

いま失踪が起きていない企業さまも、この機会に自社の就業規則を確認しておくことを強くおすすめします。規定がなければ、早めに社会保険労務士など専門家へ相談を。

なお、退職の扱いが確定するまでは資格喪失手続きに進めないため、前章の「離職日」もここで初めて決まる、という順序になります。

落とし穴3|寮に残された私物は勝手に処分できない

寮を次の実習生に使いたい、というのは自然な流れですが、置いていかれた荷物はあくまで本人の所有物です。

連絡が取れないからといって独断で処分してしまうと、後日トラブルになる可能性があります。一定期間は保管したうえで、いつ・どのような状態のものを・どこに保管したかを写真とあわせて記録しておきましょう。

そもそもこうした事態に備えて、寮の利用規約や就業規則のなかに残置物の取り扱いを定めておくのが確実です。


☆もう一点、覚えておいていただきたいこと

失踪が発生する前の1年以内に、法令違反行為や人権侵害行為があったと判断された場合は、「実習実施者の責めに帰すべき事由による失踪」として扱われます。この場合は認定取消しの可能性が高まります。

逆に、ルールどおりに実習を実施していたうえでの失踪であれば、ただちに取消しとなる可能性は低いとされています。

だからこそ、日頃の運用がそのまま結果に直結するんですね。

技能実習生が失踪すると受入れ企業にペナルティはある?

失踪が起きたとき、担当者の方がいちばん不安に感じるのがここではないでしょうか?

結論からお伝えすると、失踪が起きただけで即座に処分が下されるわけではありません。 ただし、影響がまったくないわけでもない、というのが正確なところです。

失踪しただけで即処分になるわけではない

事情を考慮せずにいきなり受入れ停止、といった扱いにはなりません。処分に至るかどうかは、失踪の原因や企業側の対応を含めて総合的に判断されます。

逆にいうと、処分の引き金になるのは「失踪そのもの」ではなく「その背景にあるもの」なんですね。

たとえば、必要な届出を出さなかった。労働基準法違反が失踪の原因だった。こうしたケースでは、失踪の有無にかかわらず問題として扱われます。

優良な実習実施者の要件で減点される

とはいえ、確実に影響が出るのが優良認定です。

優良な実習実施者と認められると、技能実習3号の受入れが可能になったり、受入れ人数枠が拡大したりといったメリットがあります。この認定はポイント制で、失踪に関する項目は次のように設定されています。

直近3年以内の失踪の状況点数
失踪者ゼロ+5点
10%未満または1人以下0点
20%未満または2人以下−5点
20%以上または3人以上−10点

割合と人数の両方が示されているのは、受入れ人数が少ない企業への配慮です。たとえば3年間で3人受け入れていて1人が失踪した場合、割合では20%以上になりますが、「1人以下」の基準を当てはめれば減点は生じません。

「責めに帰すべき失踪」と判断されると影響が大きい

注意が必要なのは、もう一つの項目です。

直近3年以内に企業側の責めに帰すべき失踪があったと判断された場合、−50点という大きな減点になります。

該当するのは、賃金を適切に支払っていなかった、劣悪な環境で働かせていたなど、法令違反行為や人権侵害行為があったケース。人数にかかわらず適用されるため、1人であっても優良認定はかなり厳しくなります。

さらに、不正行為が原因で失踪が多発したと判断されると、新規受入れの停止という措置もあり得ます。この場合、停止されるのは新規受入れだけではありません。在籍中の実習生の在留期間更新や申請手続きまで止まってしまうため、影響は社内全体に及びます。

特定技能・育成就労の受入れにも影響する

見落とされがちですが、影響は技能実習の枠内にとどまりません。

特定技能外国人を受け入れるための要件には、1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させていないことという項目があります。つまり技能実習で問題のある失踪を出してしまうと、特定技能での受入れ道も閉ざされてしまうということですね。

2027年4月から始まる育成就労制度でも、コンプライアンスはより厳しく問われる見込みです。今の運用が、そのまま将来の受入れ可否につながっていくと考えておきましょう。

※受け入れ可能な分野は「【2026年最新】特定技能の分野一覧!全19分野の仕事内容と受け入れ可否を解説」で確認できます。

失踪した技能実習生が戻ってきたらどうなる?

「届出を出したあとに本人から連絡が来たら、もう手遅れなのでは……?」

そんなふうに思われるかもしれませんが、実はそうとは限りません。

実習を継続できるケースもある

技能実習実施困難時届出書を提出したあとに実習生が戻ってきた場合、機構の判断によって実習の継続が認められるケースがあります。

届出を出した時点ですべてが終わり、というわけではないんですね。本人が戻る意思を示しているのであれば、まずは監理団体に連絡し、機構へ相談してみましょう。自己判断で受け入れを再開したり、逆に門前払いにしたりせず、必ず手順を踏むことが大切です。

なお、そのまま元の実習先に復帰するのか、別の実習先へ転籍するのかについても、機構との相談のなかで判断していくことになります。

まず本人から事情を聞き取る

そしてもう一つ、必ずやっていただきたいことがあります。

なぜ失踪したのか、本人から直接聞き取ることです。

入管庁も、失踪の背景には賃金未払いなど受入れ側の不適切な取扱いが含まれる場合があると指摘しています。所在が確認できたときには、本人だけでなく同僚の実習生からも話を聞き、そうした事情がなかったかを確かめる必要があるとされています。

「本人の勝手な行動だった」と結論づけてしまうのは簡単ですが、そこで止めてしまうと同じことが繰り返されかねません。

監理団体と一緒に自己点検を

不適切な取扱いがなかったとしても、振り返っておきたいポイントはあります。

  • 入国前の説明は十分だったか
  • 日頃のコミュニケーションは足りていたか
  • 相談できる相手が社内にいたか

こうした点を監理団体と一緒に点検し、再発防止につなげていきましょう。

ちなみに、失踪した実習生の多くは、その後の出入国在留管理上の手続きのなかで所在が確認されています。届出書に記載した理由と異なる事情があとから明らかになった場合は、その内容について改めて判断されることになります。

「戻ってこないだろう」と決めつけず、丁寧に対応しておくことが結果的に企業を守ってくれるはずです。

技能実習生の失踪を防ぐために企業ができること

ここまで対応の手順を見てきましたが、いちばんいいのはもちろん、失踪が起きないことですよね。

入管庁も、失踪の動機となる要因を取り除くには実習生とのコミュニケーションの機会を増やし、信頼関係を深めることが大切だとしています。特別なことをする必要はなく、日々の積み重ねが効いてくる部分です。

入国前に雇用条件と手取り額をきちんと伝える

来日前に本人が想定していた内容と実態にズレがあることが、失踪の要因のひとつとされています。

説明のときは、実習生の言語に対応した雇用契約書・雇用条件書を用意し、必要に応じて通訳を入れましょう。ポイントは、総支給額だけで終わらせないこと

  • 税金や社会保険料としていくら控除されるのか
  • 食費や居住費を徴収する場合、その金額と内訳
  • 結果として手取りはいくらになるのか

ここまで伝えて初めて、実習生の側も現実的なイメージを持てます。「思っていたより少ない」という不満は、多くの場合このギャップから生まれるんです。

借入額と返済計画を面接時に確認しておく

来日前に借入れをしている実習生は少なくありません。

面接の段階で、いくら借りているのか、月々どのくらい返す計画なのかを聞いておきましょう。額面をもとに返済計画を立てているケースもあるので、手取りから生活費を引いて本当に返せるのかを一緒に確認できると安心です。

無理のある計画のまま来日してしまうと、それだけで失踪のリスクが高まってしまいます。

上司以外の相談相手をつくる

困ったときに相談できる人がいるかどうかは、想像以上に大きな差になります。

このとき意識したいのが、相談相手を業務上の上司以外にすること。仕事のことで悩んでいる場合、上司には言い出しにくいですよね。可能であれば母国語で対応できる方がいると、なお心強いはずです。

仕事の話だけでなく、銀行口座の開設や病院のかかり方など、生活面のサポートも大切にしたいところ。孤立していると、外部からの怪しい誘いのほうが魅力的に見えてしまいます。

なお入管庁は、実習生と受入れ機関が日常的にやり取りをする「こうかんノート」の活用も紹介しています。サンプル様式も公開されているので、取り入れやすい方法のひとつですよ。

監理団体・送出機関を見直す

失踪リスクを下げるうえで、パートナー選びも欠かせません。

実習生から保証金を徴収したり、失踪時の違約金を設定したりすることは制度上認められていませんが、こうした慣行が残っている送出機関もあります。国も、失踪者の発生が著しい送出機関に対して新規受入れの停止措置をとっています。

ただ、送出機関を直接選ぶのは実習実施者にとって難しいのが実情。だからこそ、どの監理団体と組むかが実質的な選択になります。

  • 通訳が常駐していて、実習生が相談しやすいか
  • トラブル時に親身に動いてくれるか
  • 提携している送出機関は信頼できるか

いま契約している監理団体が期待どおりに動いてくれていないと感じるなら、見直しを検討してみてもいいかもしれません。

2027年4月からの育成就労制度で失踪対応はどう変わる?

2024年6月に公布された改正法により、技能実習制度は発展的に解消され、2027年4月1日から育成就労制度がスタートします。

実はこの制度見直しの背景にあるのが、まさに失踪の問題なんです。

転籍が認められることで「失踪しかない」状況が変わる

これまで何度か触れてきたとおり、技能実習では実習先の変更が原則として認められていませんでした。職場に問題があっても移ることができず、結果として失踪という手段を選んでしまう——この構造が、長らく課題として指摘されてきました。

育成就労制度では、一定の条件のもとで本人の意向による転籍が認められるようになります。制度のなかに「別の道」が用意されるわけですね。

もちろん、これで失踪がゼロになるわけではありません。ただ、企業側にとっては「実習生に選ばれ続ける職場かどうか」がこれまで以上に問われるということでもあります。定期的な面談や日本語学習の支援など、長く働いてもらうための体制づくりが、そのまま定着率につながっていきそうです。

※分野ごとの制限期間は「【2026年最新】育成就労の転籍条件をわかりやすく解説|分野別の制限期間一覧つき」をご覧ください。

施行後もしばらくは技能実習生への対応が必要

「2027年4月から全部切り替わる」と思われがちですが、そうではありません。

2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がなされ、2027年6月30日までに技能実習を開始する方については、現行の技能実習制度のまま実習を継続できます。施行日を境に一斉に入れ替わるわけではないんですね。

つまり施行後もしばらくは、技能実習生の失踪が起きた場合の対応——本記事でご紹介してきた手順——が引き続き必要になる、ということです。

監理団体は「監理支援機関」へ

もう一つ押さえておきたいのが、監理団体の位置づけの変更です。

育成就労制度では、監理団体は監理支援機関へと移行します。ここで注意したいのが、既存の監理団体であっても自動的に移行できるわけではないという点。改めて許可を取得する必要があり、施行日前の申請受付はすでに2026年4月15日から始まっています。

失踪が起きたときに最初に連絡する相手が監理団体である以上、いま契約している団体が新制度でも継続して支援してくれるのかどうかは、早めに確認しておきたいところです。

なお、育成就労制度における失踪時の届出様式や提出先については、今後の省令・告示によって内容が固まっていく部分があります。最新情報を随時チェックしておきましょう。

※許可の要件や申請スケジュールは「【2026年最新】監理支援機関の許可要件とは?監理団体との違い・申請スケジュールをわかりやすく解説」で解説しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

技能実習生が失踪してしまったときの対応について、初動から届出、退職手続き、ペナルティまで詳しくご紹介してきました。

今回の重要なポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 私物や在留カードが残っている場合は、失踪と決めつけず事件・事故の可能性を先に検討する
  • 令和7年の失踪者数は3,950人で、前年から39.3%減少している
  • 失踪の背景には、企業側の待遇の問題・実習生の借金・転籍できない制度上の事情がある
  • 対応は「状況確認 → 監理団体 → 警察 → 送出機関 → 機構への届出 → 給与支払い → 資格喪失手続き」の7ステップ
  • 届出先は複数の機関にまたがり、それぞれ期限が異なるため一覧で管理する
  • 失踪を理由に会社都合で解雇すると、技能実習計画の認定取消しにつながるおそれがある
  • 就業規則に「当然退職」の規定がないと、そもそも退職扱いにできない
  • 失踪しただけで即処分にはならないが、優良認定の減点や特定技能・育成就労の受入れに影響する
  • 2027年4月から育成就労制度へ移行し、一定条件のもとで転籍が可能になる

失踪への対応は、とにかく初動のスピードがすべてです。

「まだ失踪と決まったわけじゃないから」と様子を見ている間に、届出の期限が迫ってきてしまう——これがいちばん避けたいパターンなんですよね。判断に迷う段階でも、まずは監理団体に共有することから始めてみてください。

そして、この記事を落ち着いた状況で読んでくださっている方は、ぜひ就業規則の確認だけでも今日のうちに済ませておきましょう。「連絡が取れない状態が続いたときの退職の定め」があるかどうか。ここが整っているだけで、いざというときの動きがまったく変わってきます。

実習生が安心して働ける環境をつくることが、結局のところ最大の失踪対策です。この記事が、その一歩のお役に立てば嬉しいです!