【2026年最新】育成就労の転籍条件をわかりやすく解説|分野別の制限期間一覧つき

2027年4月から始まる育成就労制度。技能実習制度では原則できなかった「転籍」が認められるようになる、というニュースを目にした方も多いのではないでしょうか?

  • 「せっかく育てた人材が、1年で辞めてしまうかもしれない…」
  • 「そもそも、どういう条件を満たせば転籍できるの?」
  • 「うちの業種は何年働けば転籍されてしまうんだろう?」

こんな不安や疑問を抱えている受入れ企業のご担当者さまは、本当に多いと思います。

実は育成就労の転籍って、「自由に転職できるようになる」というイメージとはかなり違うんです。転籍が認められるまでには7つもの条件があり、しかも分野によって働くべき期間が変わってきます。さらに、転籍先の企業にも人数の上限や費用負担のルールがしっかり設けられているんですよ。

この記事では、育成就労制度の転籍が認められる条件を、2026年1月に閣議決定された分野別運用方針や運用要領の内容をもとに、できるだけわかりやすく整理していきます。分野ごとの転籍制限期間の一覧や、転籍者の割合制限のシミュレーション、初期費用の補填額の計算方法まで解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

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育成就労制度の「転籍」とは?技能実習との違い

まずは、育成就労制度の転籍がどういうものなのか、技能実習制度と比べながら見ていきましょう。

技能実習では原則できなかった転籍が認められるように

技能実習制度では、転籍(受入れ先の変更)は原則できませんでした。

というのも、技能実習は「日本で身につけた技能を母国に持ち帰ってもらう」という国際貢献が目的の制度だったからです。決められた実習計画に沿って学ぶことが前提なので、途中で職場を変えるという発想がそもそもありませんでした。

例外として「やむを得ない事情」がある場合は認められていたのですが、その範囲が明確でなく、手続きも煩雑…。結果として、劣悪な環境から逃れられない実習生が失踪してしまうケースが社会問題になっていたんです。

そこで新しく始まる育成就労制度では、外国人を「労働者」として適切に保護するという考え方が前面に出てきます。人材育成と人材確保が目的の制度に変わり、その象徴として、本人の意向による転籍が一定の条件のもとで認められることになりました。

技能実習制度育成就労制度
制度の目的国際貢献(技能移転)人材育成+人材確保
転籍原則不可一定の要件で可能
本人の意向による転籍認められない分野ごとに1〜2年経過後に可能
やむを得ない事情の範囲不明確4類型に明確化
転籍の仲介民間紹介事業者も可監理支援機関・機構・ハローワーク等に限定
在留期間最長5年(1〜3号)原則3年

「転籍が自由になる」と表現されることもありますが、実際はかなり細かい条件が設けられています。そのあたりは、このあとの見出しでじっくり解説していきますね!

※育成就労制度そのものの概要や、対象17分野、企業が準備すべきことについては、以下の記事で詳しく解説しています。

育成就労の転籍は大きく3パターン

育成就労法では、転籍が発生する場面が3つのパターンに整理されています。

  • ①やむを得ない事情がある場合:ハラスメントや賃金不払いなど、企業側に問題があるケース。技能実習制度から引き継がれた、いわば救済のための転籍です。
  • ②本人の意向による場合:特にトラブルがなくても、外国人本人が「別の会社で働きたい」と希望するケース。育成就労制度で新しく認められるようになった仕組みで、この記事のメインテーマです。
  • ③育成就労の対象でなくなった場合:受入れ企業の育成就労計画の認定が取り消された場合や、在留資格を失って一度帰国した場合などが該当します。本人の意思とは関係なく、続けられなくなってしまうパターンですね。

企業のご担当者さまが特に気にされるのは、やはり②だと思います。ただ、①と③も実務では起こりうる話ですので、3つの入口があることは押さえておきましょう。

どのパターンでも「同一業務区分内」が大前提

3つのパターンに共通する、絶対に外せないルールが2つあります。

ひとつは、転籍できるのは同一の業務区分内に限られるということ。たとえば農業から建設業へ移ることはできません。しかも同じ農業分野の中でも、耕種農業と畜産農業のように業務区分が違えば転籍はNGなんです。せっかく積み上げた技能を無駄にせず、計画的に育成するための考え方ですね。

もうひとつは、育成就労の期間が通算で3年以内に収まること。転籍しても期間がリセットされるわけではなく、前の会社での期間と合算してカウントされます。1年働いてから転籍したなら、転籍先で働けるのは残り2年です。ここは意外と誤解されやすいので、注意しておきましょう!

※育成就労計画の変更で期間が延長されている場合は、通算4年以内となります

やむを得ない事情がある場合の転籍

まずは、企業側に問題があったケースの転籍から見ていきましょう。こちらは技能実習制度から引き継がれた仕組みですが、育成就労制度では対象になる事情がはっきりと明文化されたのが大きなポイントです。

やむを得ない事情に該当する4つのケース

育成就労法では、やむを得ない事情として次の4つが定められています。

  • ①雇用契約で定めた事項について、企業側に重大な違反があった:賃金の不払い、聞いていた労働条件と実態が大きく違う、といったケースです。
  • ②暴行、脅迫、自由の制限など、人権を侵害する行為があった:パワハラやセクハラ、パスポートの取り上げなどもここに含まれます。
  • ③出入国または労働に関する法令について、不正または著しく不当な行為があった:違法な長時間労働や、届出の偽装などが該当します。
  • ④その他、従前の育成就労計画に基づく育成就労を続けることが相当でない事情が認められる:企業の倒産や廃業、事業所の閉鎖といったケースはここで拾われます。企業に落ち度がなくても、続けられない状況ならこの類型ですね。

技能実習制度では「やむを得ない事情」の中身が曖昧で、実際には転籍のハードルがとても高くなっていました。育成就労制度では類型が整理されたことで、外国人本人にとっても支援する側にとっても、判断しやすくなっています。

転籍制限期間や試験の合格は求められない

ここが本人意向の転籍との一番大きな違いです。

やむを得ない事情による転籍では、分野ごとの転籍制限期間を待つ必要がありません。働き始めて数か月であっても、該当する事情があれば転籍できます。緊急の救済措置なので当然といえば当然ですね。

さらに、次の要件も課されません。

  • 技能検定基礎級などの技能試験の合格
  • 日本語能力A1相当(N5等)の試験の合格
  • 転籍先が優良な育成就労実施者であること
  • 転籍先が転籍元に初期費用を補填すること
  • 転籍者の割合制限(3分の1・6分の1ルール)

つまり、転籍先の企業にとっては金銭的な負担も人数枠のカウントもなし、ということです。困っている外国人をすぐに受け入れられるように、ハードルが徹底的に下げられているんですね。

ただし、同一の業務区分内であること育成就労の期間が通算3年以内であることという2つの大前提は、こちらのケースでも変わりません。ここだけは共通ルールとして押さえておきましょう!

企業側にとっては「起こさない」ことが最大の対策

やむを得ない事情による転籍は、裏を返せば企業のコンプライアンス違反が引き金になる転籍です。

しかも、この類型に該当する事実が確認されれば、転籍が認められるだけでは済みません。育成就労計画の認定取消や、その後の受入れ停止といった処分につながる可能性もあります。人材を1人失うどころの話ではなくなってしまうんですね。

労働条件通知書をきちんと母国語で説明する、相談窓口を用意する、対応の記録を残す。こうした地道な積み重ねが、結果的に一番の転籍対策になりますよ。

本人の意向による転籍が認められる7つの条件

ここからが本題です。特にトラブルがなくても、外国人本人の希望で職場を変えられる。これが育成就労制度で新しく認められる「本人意向の転籍」です。

ただし、認められるのは次の7つの条件をすべて満たした場合だけ。ひとつでも欠けると、転籍先での新しい育成就労計画の認定が下りません。順番に見ていきましょう!

条件1:転籍制限期間を超えていること

転籍する前に、同じ企業で一定期間働いている必要があります。この期間のことを「転籍制限期間」といいます。

長さは分野ごとに1年以上2年以下の範囲で、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針で定められました。制度としては1年を目指しつつ、技能の習得に時間がかかる分野は2年、という整理になっています。

なお、一度転籍したあとに再び転籍したい場合も、あらためて転籍制限期間を経過している必要がありますよ。

自分の分野が1年なのか2年なのかは、実務でいちばん気になるところだと思います。分野別の一覧は次の見出しで詳しくまとめますね!

条件2:技能・日本語能力の基準を満たしていること

転籍先でもスムーズに働けるように、本人に一定のレベルが求められます。

  • 技能:技能検定試験の基礎級、または相当する育成就労評価試験の合格
  • 日本語:日本語教育の参照枠A1相当(日本語能力試験N5等)以上の試験の合格

これは、育成就労を始めて1年以内に受験することが求められている、いわば1年目の目標そのものです。分野によってはこれより高い水準が設定される場合もあるので、分野別運用方針の確認をお忘れなく。

より上位の試験に合格している場合も、当然この条件を満たします。

条件3:転籍先が優良な育成就労実施者であること

受け入れる側の企業にも高いハードルがあります。転籍先は、技能・日本語能力の試験合格率、育成体制、法令の遵守状況などに照らして「優良」と認められている必要があるんです。

裏を返せば、優良と認められていない企業は、転籍者を受け入れること自体ができません。転籍で人材を確保したいと考えている企業にとっては、優良認定が入場チケットになるということですね。

過去に優良認定を受けていなくても、申請の時点で優良と認められれば受入れは可能とされています。

条件4:転籍者の割合が上限を超えていないこと

在籍する外国人の大半が転籍者、という状態は人材育成という制度の趣旨に合いません。そのため、転籍先で転籍者が占められる割合に上限が設けられています。

基本は3分の1まで。さらに、大都市圏の企業が地方から受け入れる場合は6分の1までと、より厳しくなります。地方から都市部への人材流出を抑えるための仕組みですね。

計算方法にはいくつか細かいルールがあるので、シミュレーションつきで後ほど解説します。

条件5:転籍先が転籍元に初期費用を補填すること

転籍元の企業は、渡航費や講習費など、受入れに少なくないコストをかけています。それが1年で回収できないまま人材だけ移ってしまうのは、あまりに不公平ですよね。

そこで、転籍先が転籍元に対して初期費用の一部を支払うルールが設けられました。金額は主務大臣が告示で定める額に、転籍元での在籍期間に応じた按分率をかけて算出します。

早い時期に転籍するほど転籍先の負担が重くなる設計になっていて、これも実質的な歯止めとして機能しそうです。

条件6:民間の職業紹介事業者が関与していないこと

悪質なブローカーが引き抜きを仲介することを防ぐため、転籍のマッチングに関われる機関は限定されています。

関われるのは、監理支援機関・外国人育成就労機関・ハローワーク・地方運輸局など。民間の人材紹介会社が関与した転籍は、当分の間認められません。

しかも、これは紹介を受けた場合だけの話ではないんです。求人サイトなどの特定募集情報等提供事業者から募集情報を受けていた場合や、過去1年以内に募集情報の提供を依頼していた場合も対象外に。企業側の採用活動そのものが問われる、けっこう厳しいルールです。

条件7:育成就労の期間が通算3年以内であること

転籍後の育成就労の期間は、転籍前の期間と合わせて通算3年以内に収める必要があります(計画変更で延長されている場合は4年以内)。

また、すでに3年を超えて期間が延長されている人は、本人意向の転籍そのものができません。特定技能への移行試験に落ちて在留を延長しているケースなどが該当します。

「転籍すれば日本にいられる期間が延びる」ということはない、と覚えておきましょう。

【分野別一覧】転籍制限期間は1年?それとも2年?

受入れ企業のご担当者さまが、いちばん知りたいのがここではないでしょうか。「うちの分野は、何年働けば転籍されてしまうの?」という話ですね。

転籍制限期間は、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針で分野ごとに決まりました。育成就労の対象となる17分野を、1年と2年に分けて見ていきましょう。

転籍制限期間が「2年」の8分野

次の8分野は、転籍制限期間が2年に設定されています。

  • 介護
  • 建設
  • 工業製品製造業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • 資源循環

2年になった理由は分野によってさまざまです。たとえば介護は、利用者との信頼関係を築きながら、疾患や障害の理解、チームケア、看取りまで幅広い専門性を身につける必要があるため。飲食料品製造業は、都市部より地方のほうが有効求人倍率が高く、都市部への過度な人材流出を避けるため、といった説明がなされています。

転籍制限期間が「1年」の9分野

残りの9分野は1年です。

  • ビルクリーニング
  • リネンサプライ
  • 宿泊
  • 鉄道
  • 物流倉庫
  • 農業
  • 漁業
  • 林業
  • 木材産業

制度としてはもともと「1年を目指す」という方針ですので、こちらが原則の姿ということになります。

2年の分野でも、企業の判断で1年に短縮できる

ここ、意外と見落とされがちなポイントなんです。

分野別運用方針で2年と定められている分野でも、受入れ企業の判断で転籍制限期間を1年にすることができます。育成就労計画を作成するときに、「育成就労実施者の変更を制限する期間」の欄で決める形ですね。

つまり、同じ介護分野でもA社は2年、B社は1年ということが起こりうるということ。「うちの分野は2年だから安心」と思い込まず、自社の育成就労計画がどうなっているかを確認する必要があります。転籍を検討する外国人本人や監理支援機関にとっても、計画書のこの欄が出発点になりますよ。

2年を選ぶなら、昇給などの待遇向上が必須

では、2年を選んでおけば企業にとって有利なのかというと、そう単純でもありません。

1年を超える転籍制限期間を設定した企業は、就労開始から1年が経過したあと、昇給その他の待遇向上措置を講じる義務を負います。分野ごとの直近の昇給率を基準に毎年昇給率が設定・公表され、1年目から2年目にかけてその率で昇給させる、という仕組みです。

介護分野は少し事情が違って、介護報酬という公定価格で運営されているため、介護職員等処遇改善加算の取得などが要件とされています。

一方、自主的に1年に短縮した場合、この待遇向上の義務はかかりません。

2年を選ぶ場合1年に短縮する場合
転籍される時期2年経過後1年経過後
待遇向上の義務あり(昇給等)なし
向いている企業育成コストを長期で回収したい人件費の見通しを固定したい

2年縛って昇給を約束するか、1年で解放して義務を負わないか。どちらが自社に合うかは、育成コストや賃金体系によって変わってきます。育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から受付が始まっていますので、早めに方針を決めておきたいところですね!

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転籍者の割合制限をシミュレーションで理解しよう

7つの条件のなかでも、転籍先の企業がつまずきやすいのが「割合制限」です。数字が絡むので、具体例を見ながら整理していきましょう!

基本ルール:転籍者は3分の1まで

在籍する外国人の多くが転籍者、という状態は人材育成という制度の趣旨に合いません。そこで、こんなルールが設けられています。

本人意向の転籍者の総数 ÷ 育成就労外国人の総数(転籍後)が、3分の1を超えないこと

ポイントは、これから転籍しようとしている外国人を、分子にも分母にも含めて計算するということ。「受け入れたあとの姿」で判定するイメージですね。

たとえば、こんな具合です。

  • 転籍者3人/育成就労外国人の総数9人 → 3分の1ちょうどでOK
  • 転籍者4人/育成就労外国人の総数9人 → 3分の1超えでNG
  • 転籍者5人/総数15人 → OK
  • 転籍者5人/総数14人 → NG

「あと1人だけ」がアウトになるケースもあるので、受入れを検討する段階で必ず計算しておきたいところです。

大都市圏の企業が地方から受け入れる場合は6分の1まで

もうひとつ、地域による上乗せルールがあります。

転籍先の企業が指定区域外(大都市圏など)にあり、指定区域(地方)から転籍者を受け入れる場合は、その割合が6分の1を超えてはいけません。地方から都市部への人材流出を抑えるための仕組みです。

  • 地方からの転籍者5人/総数30人 → 6分の1ちょうどでOK
  • 地方からの転籍者5人/総数29人 → NG

なお、指定区域かどうかは育成就労実施者の住所(法人なら本店所在地)で判断します。外国人の住まいや実際の就業場所ではないので注意してくださいね。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県以外はすべて指定区域で、この8都府県のなかでも一部の地域は指定区域に含まれます。

受入れ人数が少ない企業への特例

「総数が3人だと、3分の1で1人。じゃあ小さい会社は実質受け入れられないのでは?」と思いますよね。

そこで、転籍者を含めて育成就労外国人が6人未満となる小規模な企業は、3分の1ルールを満たす限り1人まで受け入れられるという特例が用意されています。6分の1ルールが適用される場面でも、この特例で1人までは受入れが可能です。

割合の計算に含めない外国人もいる

この割合制限は、あくまで本人意向の転籍者を対象にしたルールです。次に当てはまる人は、分子のカウントから外れます。

  • やむを得ない事情によって転籍してきた人
  • 育成就労計画の変更により期間が延長されている人
  • 保護の観点から特別の理由があると認められた人

ハラスメントなどで困っている外国人を助ける転籍まで人数枠で縛ってしまっては本末転倒ですから、当然といえば当然の整理ですね。

なお、これとは別に、常勤職員数に応じた受入れ人数枠もあります。割合制限をクリアしても人数枠を超えていたらアウトですので、両方をセットで確認しましょう!

転籍先が支払う「初期費用の補填」のルール

7つの条件のなかで、お金が直接動くのがこの補填です。

転籍先の企業にとってはコスト、転籍元の企業にとっては救済になる部分ですので、しっかり押さえておきましょう。

なぜ転籍先が費用を払うの?

転籍元の企業は、その外国人を受け入れるために渡航費や送出機関への手数料、入国後講習の費用、住居の準備費などを負担しています。決して小さくない金額ですよね。

それが1年で回収できないまま人材だけ他社へ移ってしまったら、転籍元にとってはあまりに不公平です。そこで、転籍先が転籍元に対して初期費用の一部を支払うルールが設けられました。

なお、やむを得ない事情による転籍では補填は不要です。また、転籍元で初期費用が発生していない場合も支払いは要りません。

※送り出し機関の役割や費用は以下の記事で解説しています。

補填額は「告示額 × 按分率」で決まる

補填額は、主務大臣が告示で定める額に、転籍元での育成就労の期間に応じた按分率をかけて算出します(1,000円未満の端数は切り捨て)。

転籍元での育成就労の期間按分率
1年以上1年6か月未満6分の5
1年6か月以上2年未満3分の2
2年以上2年6か月未満2分の1
2年6か月以上4分の1

見ていただくとわかるとおり、早い時期に転籍するほど転籍先の負担が重くなる設計です。仮に告示額が30万円だとすると、1年で転籍した場合は25万円、2年なら15万円という計算になります。

ちなみに、この告示額そのものは2026年8月時点でまだ制定されていません。実際の金額は今後の公表を待つ必要がありますので、続報はしっかり追いかけたいところですね。

2回目の転籍では、さらに按分される

A社からB社へ、そのあとC社へ。こうした2回目の転籍にもルールがあります。

このときC社がB社に支払うのは、1回目の補填額にさらに按分率をかけた金額です。按分率は、A社での期間とA社+B社の合計期間の組み合わせで決まります。

A社での期間A社+B社の合計期間按分率
1年以上1年6か月未満2年以上2年6か月未満5分の3
1年以上1年6か月未満2年6か月以上10分の3
1年6か月以上2年未満2年6か月以上8分の3

たとえばA社に1年いてB社へ転籍し、さらに1年後にC社へ移るケース。1回目の補填額が25万円だったなら、25万円 × 3/5 で15万円をC社がB社に支払うことになります。

誓約と支払証明の提出を忘れずに

手続き面でも注意点があります。

補填額を支払うことについては、新しい育成就労計画の認定申請のときに誓約が必要です。そして認定を受けたあと、6か月以内に支払いを証明する書類を外国人育成就労機構へ提出しなければなりません。

誓約したのに支払わなかった場合は、虚偽申請として認定取消の対象になる可能性もあります。「あとで払えばいい」で済む話ではありませんので、受入れを決める前に社内で予算の確保まで済ませておきましょう。

逆にいえば、転籍先がこのコスト負担に難色を示せば、転籍そのものが成立しません。実務では、ここが最後の関門になる場面も出てきそうですね。

育成就労の転籍手続きの流れ

条件を満たしていれば自動的に転籍できる、というわけではありません。ここでは、実際にどんな手順を踏むことになるのかを見ていきましょう。

ステップ1:外国人本人が転籍の申出をする

すべては本人の申出からスタートします。申出先は、育成就労実施者(受入れ企業)・監理支援機関・外国人育成就労機構のいずれか。本人が話しやすい相手を選べるようになっています。

会社に直接言い出しにくいケースもありますから、複数の窓口が用意されているのはありがたい設計ですね。

ステップ2:申出を受けた機関が、関係機関へ通知・届出する

ここが実務上、いちばん見落とされやすいポイントです。

申出を受けた機関には、ほかの関係機関へ通知・届出をする義務が課されています。監理型育成就労の場合、たとえば企業が本人から申出を受けたら、監理支援機関へ通知しなければなりません。

そして、この通知を怠ったり虚偽の通知をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります。悪質なブローカーの介在を防ぎ、申出の事実を関係者全員で共有するための仕組みなんですね。

「本人から相談されたけれど、社内で止めておこう」は通用しません。転籍の申出を受けたら、必ず監理支援機関に共有する。ここは社内でルール化しておきましょう。

ステップ3:監理支援機関が要件を確認し、転籍先を探す

続いて、監理支援機関が転籍の要件を満たしているかを確認したうえで、転籍先となる企業との雇用契約のあっせんを行います。

ここで関われるのは監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワーク・地方運輸局などに限られ、民間の人材紹介会社は関与できません。

なお、転籍制限期間については、新しい育成就労計画の認定を受ける時点で満たしていれば足りるとされています。つまり、申出の段階でまだ期間が経過していなくても、転籍先を探す支援を始めること自体は可能なんですね。

※転籍で重要な役割を担う監理支援機関について、許可要件や監理団体との違いは以下の記事をご覧ください。

ステップ4:転籍先が新しい育成就労計画を作成する

転籍先が決まったら、その企業が新たな育成就労計画を作成します。

このとき、転籍元と同一の業務区分であることや、通算3年以内に収まっているか、受入れ人数枠や割合制限を超えていないかなどが計画に反映されます。初期費用の補填を支払うことについての誓約も、この段階で必要です。

ステップ5:機構の認定を受けて転籍が成立

作成した計画を外国人育成就労機構へ提出し、認定申請を行います。この認定をもって、ようやく転籍が正式に成立します。

在留資格に関する手続きも必要になりますので、余裕を持ったスケジュールで進めたいところ。認定後6か月以内には、初期費用の支払いを証明する書類の提出も忘れずに行いましょう。

ちなみに、転籍のたびに新しい計画の認定が必要で、しかも通算3年という上限もあることから、「実際にはそれほど頻繁には使われないのでは」という見方もあります。とはいえ制度として存在する以上、いざというときに慌てないよう流れは把握しておきたいですね!

転籍されない会社になるために今からできる4つのこと

ここまで読んで、「うちの人材が引き抜かれてしまうのでは」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

でも、視点を変えてみてください。転籍が認められるということは、外国人材から「選ばれる会社」が伸びる時代になるということでもあります。しかも優良な育成就労実施者と認められれば、逆に転籍者を受け入れる側にもなれるんです。

ここでは、施行までに準備しておきたいことを4つに整理しました。

①自社の転籍制限期間を「1年か2年か」決めておく

2年の分野に該当する企業は、まずここが最初の経営判断になります。

2年を選べば人材を長く確保できますが、1年経過後の昇給などの待遇向上義務がついてきます。1年に短縮すれば義務はかかりませんが、そのぶん早く転籍の可能性が生まれます。

自社の賃金テーブルや育成コストの回収期間と照らし合わせて、どちらが現実的かを検討しましょう。この判断は育成就労計画に書き込むことになりますし、計画の認定申請は2026年9月1日から受付が始まっています。先送りできる話ではありません。

※昇給や育成にはコストがかかりますが、活用できる助成金もあります。

②「優良な育成就労実施者」を目指す

優良認定は、転籍者を受け入れるための入場チケットです。それだけでなく、受入れ人数枠の拡大というメリットもあります。

評価されるのは、技能・日本語能力の修得実績、育成の体制、外国人の待遇、法令違反や行方不明者の発生状況、相談・支援体制、地域社会との共生の取組など。どれも一朝一夕では整いません。

具体的な基準は運用要領で追って示される予定ですので、公表され次第すぐ動けるよう、今のうちから体制の棚卸しをしておくと安心です。

③キャリアパスを見える化する

外国人材が転籍を考える大きな理由のひとつが、「この会社にいて先が見えない」という不安です。

育成就労の3年間だけでなく、特定技能1号、そして2号までを見据えた道筋を採用の段階から本人と共有しましょう。技能検定や日本語試験の受験費用を会社が負担する、勤務時間内に学習時間を確保する、定期的にキャリア面談を行う。こうした取組は、そのまま優良認定の評価にもつながります。

「会社が自分の成長に投資してくれている」という実感は、何よりの定着策になりますよ。

※特定技能1号・2号の違いや必要な試験は、以下の記事をご覧ください。

④相談できる環境と、住みやすい生活基盤を整える

職場で孤立してしまうと、小さな不満が積み重なって転籍につながります。

母国語や「やさしい日本語」で相談できる窓口をつくる、定期的に個別面談を行う、日本人社員向けの異文化理解研修を実施する。受け入れる側の意識を変えることも大切です。

生活面では、住居のWi-Fi環境の整備なども意外と効きます。母国の家族と連絡を取る大事な手段ですからね。

そして忘れてはいけないのが、やむを得ない事情による転籍を発生させないこと。労働条件通知書をきちんと説明し、説明した内容や対応を記録に残す。この地道な積み重ねが、結果的に一番の転籍対策になります。

育成就労の転籍でまだ決まっていないこと

ここまで転籍のルールを解説してきましたが、実は2026年8月時点でまだ確定していない部分もいくつか残っています。

「調べたのに答えが出てこない…」とモヤモヤしないよう、何が決まっていて何が決まっていないのかを整理しておきましょう。

初期費用の補填額(告示額)

按分率は省令ではっきり決まっているものの、そのベースとなる主務大臣が告示で定める額は、まだ制定されていません

つまり現時点では「1年で転籍されたら告示額の6分の5」ということはわかっていても、実際にいくら支払うことになるのかは計算できない状態です。転籍者の受入れを検討している企業にとっては、予算組みに直結する重要な情報ですので、告示の公表は必ずチェックしておきたいところですね。

優良な育成就労実施者の具体的な基準

転籍者を受け入れるには優良認定が必須ですが、その具体的な基準や申請手続きの詳細も、今後運用要領のなかで示される予定です。

評価される項目(技能・日本語の修得実績、育成体制、待遇、法令遵守状況など)は公表されていますので、方向性は見えています。ただ、何点で優良になるのかといった細かい基準はこれからということですね。

移籍金など、金銭の取り扱いの細部

初期費用の補填とは別に、企業間で移籍金のようなやり取りが発生する可能性も指摘されています。ただし、その上限額や管理方法については現時点で法令上の定めがなく、当面は企業間の合意に委ねられると考えられています。

監理支援機関の役割はあくまで連絡調整や支援であって、金銭の管理は想定されていません。トラブルを避けるためにも、転籍元・転籍先の企業間で書面をしっかり残しておくのが安全です。

分野ごとの上乗せ要件

日本語能力については、分野の特性に応じてA1相当より高い水準を設定することが認められています。分野別の運用要領(いわゆる運用要領別冊)は作成され次第の公表とされていますので、自社の分野の詳細はそちらで確認が必要です。


制度の細部はこれからも更新されていきます。育成就労の運用要領は2026年2月に公表されたあとも改正が行われていますので、出入国在留管理庁のページを定期的に確認するのがいちばん確実です。当協議会でも最新情報を随時発信していきますので、あわせてご活用くださいね!

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、育成就労制度における転籍の条件について詳しく解説してきました。

今回の重要なポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 転籍には「やむを得ない事情による転籍」「本人の意向による転籍」「育成就労の対象でなくなった場合」の3パターンがある
  • どのパターンでも、転籍先は同一の業務区分内育成就労の期間は通算3年以内が大前提
  • やむを得ない事情による転籍は、転籍制限期間の経過も試験の合格も不要
  • 本人意向の転籍は、7つの条件をすべて満たして初めて認められる
  • 転籍制限期間は分野ごとに1年または2年。2年の分野でも企業の判断で1年に短縮できるが、2年とする場合は昇給などの待遇向上措置が必要
  • 転籍先には、優良認定・割合制限(3分の1・6分の1)・初期費用の補填といったハードルがある
  • 転籍の申出を受けたら関係機関への通知が必須。怠ると30万円以下の罰金
  • 初期費用の補填額(告示額)や優良認定の具体的な基準は、2026年8月時点で未確定

「転籍が自由になる」というイメージが先行しがちですが、実際には人材育成という制度の趣旨を守るための歯止めが、いくつも設けられているのがおわかりいただけたのではないでしょうか。

とはいえ、外国人材が職場を選べるようになるという流れは変わりません。だからこそこれからは、囲い込みではなく「選ばれる職場づくり」が、いちばん確実な転籍対策になっていきます。

育成就労計画の認定申請はすでに受付が始まっており、2027年4月の施行まで残された時間は多くありません。自社の転籍制限期間をどうするか、優良認定に向けて何を整えるか。この記事を参考に、できるところから準備を進めていきましょう!